心が乱れて、切なくて、苦しくて。 [自作小説]
飛び出したい!
まだ見ぬ世界へ。
走り出したい!
あの高みの更に向こうへと。
そして走り抜けたい!
知らない人たちと出会いながら。
我、希望に溢れ、盛んに未来への羨望を言い表し、幸せへの渇望を満たす事が出来ると信ず。
それをあの人は鼻で笑った。
声高らかに罵った。
君に何が出来る?
たったこの場さえ変える力のない、非力な君が。
異国とのコミュニケーションの仕方さえ見当もつかない、要領の悪い君が。
何が出来るというのだ?
そうだとも。何の力もないとも。
そう言い返してやれればよかったのに。
秘めた恨みを内で燃やし、負けるもんかと踏ん張りながら。
着実に力をつけて、ものの見事にぎゃふんと言わせてやるのだと、かたく決意しながら。
そうさ、私を見返せばいい。
私が納得する証拠を見せ付けて、屈服させてみろ。
ならば、私はその分楽をしながら、喜んで君の下につくさ。
独り言のように、語っていたその言葉を、ようやく何年も経ってから意味に気づく。
今になって。
あなたが遠い地に行ってしまってから、ようやく。
この場所にたどり着けて、ようやく分かるなんて。
今更、あなたに見てもらいたい一心で、ここまでやってきた事に気づくなんて。
今からでも、間に合いますか?
今からでも、遅くはないですか?
今からでも、追いつけますか?
あなたは、受け止めてくれるでしょうか。
唐突に理解し始めた気持ちを持て余しながら、過去に憧れた未来とは食い違う今、
異なる幸せを望まんと欲す。
きっとあなたならば、この気持ちを言葉にする術も、知っているでしょう。
しかしどんなに拙くとも、あなたが納得するまで思いを表してみせましょう。
この苦しい、脆い、溢れんばかりの気持ちと、僅かな希望と。
今までの経験を背負いながら、ようやく今日、あなたの元へ行く。
ぎゃふんなんて古典的な降参の意を、果たして本当に言ってくれるのだろうかと、楽しみも抱きながら。
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